引き直し計算とは?行う目的や計算方法をわかりやすく解説
- 執筆者弁護士 山本哲也

消費者金融やクレジットカードのキャッシングを長期間利用していた方の中には、「引き直し計算」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
これは、過去に支払った利息が法律の上限を超えていた場合に、利息制限法に基づいて正しい利息を再計算する作業です。
引き直し計算は、過払い金が発生しているかを確認するために欠かせない作業であり、正確な計算が損をしないためには重要です。
そこで本記事では、引き直し計算の概要や目的、実際の計算方法、そして弁護士や司法書士に依頼するべき理由まで詳しく解説します。
引き直し計算とは

まず、引き直し計算がどういったものなのかを解説します。
法律に基づいて利息を再計算する作業
引き直し計算とは、貸金業者との過去の取引履歴をもとに、利息制限法の上限金利に従って正しい利息を再計算し、実際の返済との過不足を明らかにする作業です。
利息制限法による上限金利は以下の通りです。
- 元本10万円未満:年20%
- 元本10万円以上100万円未満:年18%
- 元本100万円以上:年15%
過去には利息制限法の上限を超える「グレーゾーン金利」が存在しており、多くの消費者が違法な金利で借り入れを行っていた時期がありました。
たとえば年25~29%で借り入れをしていた場合、その差額が「過払い金」として発生している可能性があります。
過払い金返還請求の出発点
引き直し計算の最大の目的は、過払い金が発生しているかどうかを明らかにし、返還請求するべき金額を正確に把握することです。
逆に言えば、引き直し計算をしなければ払いすぎた利息に気づけず、過払い金の返還請求もできません。
また、現在返済中の方が「利息制限法に基づいた正しい残債額を確認したい」ときにも、引き直し計算は有効です。
過払い金請求は、完済が条件とされているわけではありません。
現在の正しい残高が把握できれば、返済負担を大幅に軽減できる可能性があります。
引き直し計算は自分でできる?

結論から言えば、引き直し計算は自分でも行うことが可能です。
しかし、いくつかのハードルがあるのも事実です。以下にて詳しくご説明します。
自力で引き直し計算を行う方法
自力で引き直し計算を行うには、まず貸金業者から「取引履歴(取引明細書)」を取り寄せる必要があります。
取り寄せるには業者に「開示請求書」を提出しなければなりません。
書式に細かな指定などはありませんが、業者側の公式サイトなどで書式が公開されていることもあるため、あらかじめ確認してみるのがおすすめです。
次に、取り寄せた取引履歴をもとにエクセルや専用ソフトなどを使って、利息制限法に基づく利息で再計算をしていきます。具体的な作業内容は以下の通りです。
- 返済日や借入金額、利率、借入日数などを指定欄入力する
- 利息制限法の上限金利に基づき、利息が自動計算される
- 残元本を払いすぎた利息が上回った時点で過払い金が発生する
無料で使える引き直し計算ソフト(エクセル版など)もインターネット上に公開されています。入力自体はそれほど難しい作業ではないのでご安心ください。
自力では困難なケースも
上述のとおり、引き直し計算は一見すると単純な作業に思えるかもしれません。
しかし、以下のような場合には注意が必要です。
- 途中で返済を長期間中断していた(完済していた期間があるなど)
- 利率が頻繁に変動している(途中で利率の変更があったなど)
- 取引履歴に不明な点がある(そもそも履歴が不足しているなど)
このような場合、誤った計算によって過払い金額が少なく出てしまう危険があります。
【参考】弁護士に依頼する理由
引き直し計算で注意すべきポイント

正確な引き直し計算を行うためには、いくつか注意点があります。
開示された履歴が不完全なケース
業者から開示された取引履歴が一部欠けている、あるいは借入れ初期の記録が残っていないことがあります。
そうした場合、過払い金の計算結果が不正確になるため、不足期間の取引履歴の調査や補完資料の提出を求める必要があります。
業者独自の計算方式を用いた抵抗
交渉や訴訟においては、業者側が「独自の引き直し計算方式」を主張してくることがあります。
そのまま受け入れてしまうと、本来返ってくるべき過払い金が少なく見積もられてしまう可能性があるため注意しましょう。
【参考】【Q&A】過払い金を無料で調べる方法は?過払い金請求のデメリットとは?
正確な引き直し計算をするためには弁護士や司法書士への相談がおすすめ

引き直し計算は、単なる利息の再計算ではなく、過払い金を正確に把握し、返還請求につなげるために必須の作業です。
自力で取り組むこともできますが、取引履歴の内容が複雑であったり、記録の一部が欠落していたりする場合は、正確な計算が難しくなってしまいます。
そのため、過払い金の返還を少しでも確実に、かつ有利に進めたいと考えるのであれば、弁護士や司法書士に相談することを強くおすすめします。
正確な引き直し計算だけでなく、業者側との交渉を有利に進めることが十分可能です。
当事務所では過払い金に関するご相談であれば、何回でも無料で受け付けています。
過払い金の存在が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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